JTBも行政処分――貸切バス下限運賃違反から考える旅行会社の法令遵守
観光庁は令和8年7月、旅行会社大手JTBに対し、旅行業法第19条第1項に基づく9日間の業務停止命令(一部支店)を行いました。処分理由は、貸切バスを利用した旅行において、国土交通大臣が定める貸切バスの下限運賃を下回る運送契約を締結させたことです。
貸切バスの下限運賃は、運送事業者の適正な収益を確保し、安全運行を維持するために設けられています。過度な価格競争は、運転手の労働環境悪化や車両整備費の削減につながりかねず、安全確保の観点から国土交通省・運輸局が特に重視しているルールです。そのため、旅行会社が下限運賃を前提としない旅行を企画・販売することは、旅行業法上も重大な問題となります。
では、なぜこのような違反が起こるのでしょうか。原因として考えられるのは、営業現場での価格競争の激化、見積作成時の確認不足、バス会社との認識のずれ、さらには担当者任せとなった社内チェック体制の不備などです。大手企業であっても、複数部署を経由する中で確認が形骸化すれば、法令違反は起こり得ます。
こうしたリスクを防ぐためには、「知らなかった」「バス会社に任せていた」では済みません。見積段階で下限運賃を確認するチェックリストの整備、運賃制度に関する定期研修、契約締結前のダブルチェック、法改正や運賃改定情報の社内共有など、コンプライアンスを仕組みとして構築することが重要です。
旅行業は、お客様の安全・安心を提供する事業です。その土台となるのは、適正な運送契約の締結にあります。今回の行政処分は、一企業だけの問題ではなく、すべての旅行業者に対し、法令遵守体制を改めて見直すよう促す警鐘といえるでしょう。
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